ノミの生態

ノミは四千万年以上前から存在する昆虫で、動物の皮膚に寄生し、吸血する昆虫類の外部寄生虫です。現在世界で知られているノミの種類は2000種近くいますが、 知られていないものを合わせれば3000種位になるのではないかと言われています。犬、猫に通常みられるノミには、イヌノミ、ネコノミという種類がありますが、 現在ではほとんどがネコノミの寄生といわれています。ネコノミとはいってもネコにだけ寄生するわけではなく、イヌやウサギなどあらゆる動物に寄生し、人も吸血されます。

ノミのライフサイクル
ノミには一定のライフサイクルがあり、卵→幼虫→さなぎ→成虫 という形で発育をします。動物に寄生しているのは成虫だけで40日間〜20日間。その他は卵、幼虫、さなぎといった形で2〜3週間を動物の 近くの環境でひっそりと生活しています。 一般に約3〜4週間、環境によってはさらに短期間でこの発育を繰返します。


(1)卵の時期

大人のノミは犬や猫の身体に卵を産み付け、その卵はいろいろな場所に落ちます。卵は通常2日〜12日で幼虫にかえります。0.5mの楕円形で白色

(2)幼虫の時期

幼虫はふ化すると、有機物のかけらなどを食べながら、そこら中をはい回ります。特に重要な彼らの餌は大人のノミの糞(フン)です。4〜20日(発育期間の条件によっては10〜100日)以内に幼虫は2回の脱皮を経て、さなぎになるため繭(まゆ)にくるまります。

(3)さなぎの時期

幼虫の時期に蓄えた栄養をもとに、繭の中でさなぎから最終的には成虫まで変態します。この形態は、最適な環境であれば数日、長いもので200日続きます。この時期は極端な暑さ寒さの中では生き残れませんが、よく売っているノミ退治の薬品は効きません。このため、ノミ退治をしたはずが、2〜3週間してまたノミが跳び回っているという状況が発生します。

(4)成虫の時期 大人になったノミは近くにいる宿主の存在を感知し、跳びのって一生くっついて過ごします。ノミの成虫は雌雄共に吸血し、宿主(人、猫等)の出す炭酸ガスを感じて飛びつきます。ほとんどのノミは長くは生きられないので、すばやく繁殖します。雌は毎日自分の体重の15倍の血液を吸い、わずか48時間以内に産卵を始めます。1回の吸血のたび4〜8個卵を産み、毎日平均30個の卵を産卵し、一生に約200〜500個の卵を生みます。最適な環境下では、卵から大人になるまで10〜15日です。成虫の寿命は40〜120日ですが、現在では冬でも暖かい環境が整っていれば、ノミも1年中生き延びられるようです。


ノミの身体
ノミの身体は、非常に堅い、いわば「鎧(よろい)」を着ているようなものなので、手でつぶすのは困難です。また、ノミを横から見ると、まるで豆に足の生えたような格好をしています。この格好は宿主の毛の間をスルスルと通り抜けるのに非常に適した格好なのです。
身体のすべては宿主の身体で生活するのに特化されたつくりとなっています。触覚はにおいや温度の変化を感知します。また、口には2つのチューブがあり、1つは吸った血液を胃に送り、もう一つは唾液を噛んだ傷に流し込みます。この唾液にはある種の化学物質が含まれており、血が固まるのを防ぎます。この唾液がアレルギー反応を引き起こし、痒み(かゆみ)の原因になるのです。バネのような足は、自分の身体の150倍もの高さを跳ぶことを可能にします。

ノミの生活場所
成虫のノミは吸血する時だけ犬、猫に寄生します。では、卵、幼虫、さなぎはどのような所で生活しているのでしょう。

(1)屋内
大人のノミは離されるまでは、自分から宿主の身体を離れることはありませんが、その他のライフステージはほとんどの場合、家の中で起こります。カーペット、特に厚手のものは、幼虫にとって暖かなベッドとなるし、ほとんどの卵はそこでふ化します。さなぎもそこで大人になるのを待ちます。その他、ソファーの下、家の中の裂け目、床板のつなぎ目などもノミの子供の隠れ家となります。ノミにとって快適な気候は、温度18℃以上となり、湿度60%〜80%となる春から夏にかけてです。この時期が特に要注意です。しかし家庭内では暖房器具や加湿器などによってノミにとっても非常に住みやすい環境でき、一年中生き伸びられる環境が整っています。ノミの生命力は強く寒い環境ではさなぎの状態で長期間生き続けることもできます。

(2)屋外
ほとんどのノミは芝や雑草の中では成長しませんが、暖かく湿った日光の射さない場所、例えば陰の場所ある犬小屋の中などは住みかになる可能性があります。


ノミの被害
ノミは、ペットと飼い主に様々な障害をもたらします。ペットによってはノミに血を吸われることが原因で、アレルギーの症状が出ることもありますし、ノミが媒介となって寄生虫が体内に入り、様々な病気の原因になります。

(1)ノミアレルギー性皮膚炎(要注意)
脱毛ノミによる吸血が繰り返される結果、ノミの唾液成分が抗原となりアレルギー反応により皮膚炎を起こし、湿疹や激しいかゆみ、脱毛などの症状をおこします。また、激しいかゆみにより精神的なストレスを受けます。たった一匹のノミの唾液が原因で、ペットの全身にアレルギー性皮膚炎が起こることもあります。ノミアレルギーに起因するショック死の例も報告されています。

(2)化膿や細菌の二次感染(要注意)
アレルギー状態となり皮膚炎を起こすことにより、痒くてかいたり、噛んだりするために傷口から細菌が入り込み化膿してしまうことがあります。犬や猫の足や口の中には、様々な細菌が繁殖していますので、致命的な皮膚炎を引き起こす可能性もあります。  

(3)貧血
多くのノミが寄生し吸血されることにより貧血を起こすことがあります。それに伴い、毛づやがなくなったりすることもあります。野良猫の生んだ子供には例外なくノミが寄生していると思って間違いありません。体重数百グラムの仔猫に多数寄生すれば貧血による死亡の理由になります。現に、ノミの吸血で引き起こされる貧血による死亡が、野良の仔猫の死亡例でトップに上がっています。体重換算の感覚で言えば、仔猫に対するノミの大きさは人間に対するミツバチくらいの感じになるでしょうか?そんなノミが無数についていることを想像していただければ仔猫にとってノミが如何に恐い存在であるかご理解いただけるかもしれません。

(4)猫伝染性貧血症
猫の赤血球にヘモパネトルラ・フェリスという小生物が寄生する伝染病で、赤血球が破壊され、貧血症と黄疸を引き起こします。ノミが刺す時に移るのではないかと疑われています。

(5)条虫(サナダムシ)の伝播
瓜実条虫は、白色ないし黄白色の、大きいものでは、50cmくらいにもなる寄生虫です。サナダムシとも呼ばれます。主な終宿主は犬と猫で、小腸に寄生します。人への寄生も報告されています。発育するためには、中間宿主として、イヌノミ、ネコノミ、ヒトノミが必要です。この瓜実条虫の生活史は、犬・猫に寄生する瓜実条虫が片節を離脱させ、体外に放出させ、その片節は自発的に運動を行い、虫卵を放出します。その虫卵がノ ミに捕食され、ノミの体内で一定期間を過ごし成長し、犬・猫がそのノミを毛づくろいの時などにノミを捕食して寄生します。それに伴い下痢・食欲不振 ・嘔吐などの症状を起こすことがあります。便の表面やお尻の周りの毛をよく調べ、サナダムシの体節(米粒くらい)が動いていたり、体節のひからびたもの(きゅうりの種くらい)が付いていないか、よく観察しましょう。

(6)伝染性疾患
ペットにノミが寄生すると、皮膚に化膿性病変が起きるパスツレラ感染症になることがあります。

(7)人への影響
ノミが人間に寄生することはありませんが、人を刺すことはあります。激しいかゆみを伴い発赤や湿疹が生じ、皮疹(ノミ刺咬性皮膚炎)ができる人もいます。ベッドにまでノミがいれば話は別ですが、刺される箇所はノミがジャンプできる50センチまでの高さで主に足首からヒザに集中します。男性よりスカートをはく女性に被害が多いようです。吸血されると皮膚は発赤し、激しい痒みが起こります。痒みは1〜2日消滅せず、その部位に点々と黒班が残りますので、女性はスカートがはけなくなります。ノミが血を吸う時に唾液を出し、血が固まらないようにするのですが、この唾液1滴で10万人の人間がかゆがるくらいの威力があると言われるほどです。
このかゆさは、しつこく残り、数日間続きます。何日かたってから掻くと、再びはれてきてかゆみがぶり返してくるのも特徴的です。「手へんに蚤(ノミ)」と書いて「掻(か)く」という字ができたのもその由縁だそうです。