フィラリア成虫の寄生が予想される犬への予防薬の与え方

<既感染犬への予防薬投与の前に知っておいていただきたいこと>
これまで別のところでも述べてきたように、フィラリア予防薬は「既に成虫になって体内に寄生しているフィラリア」を殺して駆除することは出来ません。フィラリアが犬の健康に害をなすのは成虫だけなのに、その成虫を殺せないのです。
フィラリアの予防薬は「これから成虫になる蚊から移ったフィラリア幼虫」を殺すだけですから、すでに体内にいる成虫が引き起こす様々な害は「成虫を駆除する」ことによってしか防げません。
ですから、成虫の数が多い重感染をしている犬は、予防薬を飲ませても手遅れになるケースが少なくありません。
海外のフィラリア予防薬(海外と言っても成分は同じ)の使用説明書が、投与前に成虫の有無を確認する検査を奨めているのは、「検査なしで飲ませると危険だ」ということよりも、予防薬を飲ませることに優先して成虫を駆除しなければ犬の命が危ない場合があるからです。
また、予防薬の投薬前に検査をするのは、投薬後に検査をしたのでは予防薬の働きによって成虫が産むミクロフィラリアが死滅してしまったり、成虫の♀がミクロフィラリアを産むことができなくなったりするので、成虫がいるかどうか分からなくなってしまうからです。

蚊から移ってきたフィラリアの感染幼虫は、決められた量を決められた日数間隔で予防薬をきちんと飲ませてさえいれば100%死滅します。
ですから、仔犬のときから継続して予防をしてもらっている犬には成虫寄生の心配はありませんが、その他の場合には一応成虫が寄生しているリスクを考える必要があります。

ここでいう成虫が寄生しているリスクとは「検査をせずに予防薬を与えたら危ない」ということではありません。
成虫のいること自体が犬の健康に及ぼすリスクのことです。
フィラリアの♀成虫は体長が30cm近くに達する大きな虫です。
もし仮に、小型犬とヒトの体の大きさと同じ比率で拡大された虫がヒトの肺動脈にもいるとすれば、イメージ的には多数の白蛇が人の肺動脈で蠢いているのと大きくは変わらないと言えるかもしれません。
数匹の感染ではフィラリアに特有の症状として表面化しないのが普通ですが、その寄生が動脈硬化や肺動脈高血圧症などを招き、犬の健康の負担になっていることは容易に想像できます。
また、多数いる成虫の中で1匹でも自然に死亡すれば、その死骸が心臓の血管を塞いでしまうリスクもあります。 現にそうやって多くの犬達がフィラリアで命を奪われています。
体内のフィラリア成虫は駆除されなければなりません。

しかし、成虫が体内にいると分かっても、必ず注射薬を使って駆除をしなければならないかどうかは個々のケースによって臨床獣医師の間でも判断が分かれるところです。
理由のひとつは「成虫駆除薬(イミトサイド)の使用には一定の安全リスクが避けられないこと」、もう一つは「成虫駆除薬は考えられる副作用リスクを軽減するために注射前に時間をかけてイベルメクチンを少量ずつ与えて成虫が産んだミクロフィラリアの数を減らしておかなければならなかったり、ドキシサイクリンやコルチゾンの注射を何回も繰り返さなければならなかったり、場合によっては成虫駆除注射を2回に分けて行ったり必要があるので複数回病院に連れて行かなければならない(あるいは入院させる)」「注射後30日程度は絶対に運動をさせない」など飼い主さんも犬にも大きな負担がつくからです。
場合によっては、この運動制限は数ヶ月続きます。(体長30cmに達する多数の虫を駆除するといっても、腸管に棲息する回虫のように便と一緒に排泄されるものではなく、死骸は肺動脈などに残り、白血球によって溶解されて細胞に吸収されるまでには時間がかかります。)
数ヵ月後に改めて成虫が全部駆除できたかどうかの確認検査も行わなければなりません。
成虫駆除はこのように犬にも飼い主さんにも獣医師にも大変な作業です。
この間は成虫の残骸が血流を阻害することもあるので、注射後数ヶ月は犬を自由に運動をさせることが出来ません。
注射を2回に分けて行うということもそのあたりのリスクを軽減するためでもあります。
また、未成熟成虫はどういうわけか駆除薬に対して抵抗力があるので、それを駆除するのには投与量を増やす必要があり、それは当然副作用リスクを高めます。
そのために注射間隔を空けて未成熟成虫が成長するのを待つ、ということもあるそうです。そうなれば犬と人間の負担はますます増大します。
また、成虫が一時に大量に死亡することにより、成虫の体外に流出したウォルバキアが血流に乗って他の臓器に到達して害をなす、というリスクも指摘されています。)

いずれにしても、重度感染犬の成虫駆除は大変な手間と時間がかかります。
アメリカのフィラリア協会から、成虫駆除剤を使えない重度感染犬への専門的な治療プロトコールが示されています。
成虫駆除剤が使えない間のフィラリア病の管理ガイダンス
Guidance for Heartworm Disease Management During the Adulticide Unavailability


成虫駆除にはもう一つ厄介な問題があります。
それは成虫の駆除は「駆除をしただけ」であって、それで犬に免疫が出来るわけではない、ということです。
ですから、その後きちんとフィラリア予防薬を飲ませなければまた新しい感染を繰り返すこともありますが、それにも増しての問題は「成虫を駆除できてもそれまでの害の後遺症は残る」ので完治した(フィラリア感染前の状態に戻った)とは言えないことです。
例えば、人間と同じでフィラリア成虫によって一旦硬化した動脈は元に戻りません。
ですから、成虫がいなくなっても、特に心臓の健康には気をつけてあげなければならなくなり、念のためにエナカルドを一生与え続けるなどということもありえます。

寄生している成虫の数が少なければ駆除に伴うリスクも軽減されます。
ですから「少しの寄生であればリスクも低いので駆除してしまった方がいい」という考え方も成り立ちますし、「今後新しい寄生がないのであれば、無理をせず少数の成虫の自然死滅を待った方がいい」という考え方も成り立ちます。
つまり、少数寄生をどうするかは、ケースバイケースで判断されるということになりますが、最近の傾向としては軽感染には駆除剤の使用をしないで、成虫の自然消滅を待つことが多いようです。
以前から経験的には言われてきたことですが、フィラリア予防薬としてもっとも広く使われているイベルメクチン製剤(海外製品ではハートガードやフェアプライスなど、国内でもカルドメックをはじめ数種類のジェネリックが発売されている)を使うと成虫の寿命が短くなることが知られるようになったからです。
成虫の寿命は普通5〜7年とされていますが、イベルメクチンを与え続けていると、それが2年ほどでいなくなってしまうということです。それであれば何も無理をすることはない、ということでしょうか。


<成虫が寄生している可能性のある犬へのフィラリア予防薬の与え方>

フィラリアが怖いことの理由は、慢性的に心臓やその他の臓器を傷めることと共に、ある日突然、成虫が心臓の血流を塞いでしまうことによって「ケイバル症候群」を引き起こすことがあるからです。
ケイバル症候群(動画)
Caval Syndrome(英文)

この症状はそれまで肺動脈や心臓にいた成虫が心臓(三尖弁)を越えて後大静脈に移動することで起きます。
それが突然起きるには何らかの引き金になる事象があるとされ、フィラリア予防薬の投与によるミクロフィラリアの死亡もその一つの可能性として挙げられていますが、加齢、過激な運動、興奮、熱中症など心臓に影響を及ぼす外因、更には鎮静剤や麻酔薬の投与など何らかの理由で心臓機能が低下することによって肺動脈の血流が弱くなり、成虫が心臓に向って移動してしまう、肺動脈が成虫の刺激によって炎症を起こすことが動脈の収縮を招く結果としてやはり成虫が心臓の方に移動するなど、その他の原因のほうが圧倒的に多数例です。
(そもそも急性フィラリア症状は予防薬を飲ませてもらえない犬に生じて多くの命を奪っていることが深刻な問題なのです。)
ケイバル症候群のリスクは成虫の数が多ければ多いほど高くなりますが、必ずしも、成虫の数に比例するものではありません。要は成虫の移動が原因なので、十数匹で発症する運の悪い犬もいますし、100匹以上いても発症しない犬もいます。

フィラリア予防薬を与えることによるショックが成虫の移動のきっかけになる可能性が少しでもあるのであれば、そのショックを和らげることで副作用としての発症リスクを低下させることを考えなければなりません。
典型的な例としては、飼い主さんが何らかの理由でフィラリア予防をしていなかったり、予防薬をあげることを長期間怠けてしまった場合、そして「まだフィラリア特有の症状が出ておらず、少数の成虫を駆除しなくても許容できる場合、あるいは成虫の存在の可能性が あるが検査では検出できない可能性のある場合」です。 既に発症が見られる「中度感染」「重度感染」が懸念される犬を対象とした方法ではありません。
感染の深刻度の目安については「フィラリアとはどんな虫か?」をお読みください。

投与リスクを下げる一つの方法は、動物病院で行うことがあるようにプレドニゾロンなどのステロイド製剤を予防薬投与の前に与えておくことです。
しかし、この方法を飼い主さんが試すことはお奨めできません。
一般的には一回だけのステロイドの副作用は軽微とされていますが、ステロイドはフィラリア予防薬のように海外では家庭薬とされている医薬品は違い、どの国でもれっきとした?処方薬ですから「素人」が弄ぶようなことを奨めるのは言い過ぎだろうと思われるからです。

通常の投与量ではミクロフィラリアを除去しないモキシデクチン系のフィラリア予防薬(日本製ではモキシデック及びそのジェネリック、海外製ではプロハート)を選択するのも一つの方法です。
ミクロフィラリアが除去されなければ、その犬が他の犬に対する感染源になってしまうという問題はあり、今いるミクロフィラリアは1〜2年でいなくなるにしても、新しいミクロフィラリアが生まれなくなるためには成虫が自然に生殖能力を失うのを待つ必要があります。
もっとも、モキシデクチンにはミクロフィラリアは殺さないものの、イベルメクチンと同じように成虫の生殖能力を奪ったり、寿命を縮める効果の可能性があるという話もあり、今後の検証成果が待たれています。
モキシデクチンがミクロフィラリアを除去しないというのは事実ですが、それでも モキシデックの説明書には「後大静脈症候群」を引き起こす可能性があると書かれています。(同一成分であるプロハートには記載がありません。) これは、ミクロフィラリアの死骸が深刻な副作用を及ぼす可能性があるという動物病院の「公式見解」とは矛盾しますが、別にミクロフィラリアに関係しなくても、投薬によるショックや、あるいはまったく偶然のタイミングで因果関係を説明できない事故が生じ得ることは事実のようです。モキシデクチンを使うにしても、下記に述べる投与方法を試してみる方がよさそうです。

もう一つ、飼い主さんが簡単に出来る方法はフィラリア予防薬の第一回目の投与量を極端に減らして様子を見ながら、以後数日間隔でやはり少量の投与を行う方法です。
これは、予防薬の投与によって、ミクロフィラリアが自然死亡よりも多く死亡した場合、その死骸がフィラリア成虫を移動させるきっかけになり得る可能性が指摘されているので、そのリスクを軽減するためのものです。
(極端に多くのミクロフィラリアが同時に死滅するのでなければ、つまり通常の状態で寿命を終えて自然死するミクロフィラリアならば食細胞によって溶かされて吸収されてしまい、どうということはありません。)
投与後の犬の心臓に負担を掛けないために少なくとも数時間は運動させないで、細心の経過観察を行うことも同じ理由から必要です。
また、フィラリア成虫の有無に関わらず、犬が初めて口にするものであれば軽度のアレルギー性下痢・無気力・ふらつき、などを生じることもありえますから、その安全確認の意味もあります。)

蚊から移された幼虫を完全に死滅させるのには体重1kgあたり6μgのイベルメクチンが必要ですが、これを2μgにしても80%の幼虫は死亡するとされています。
(予防薬にはイベルメクチンの含有量が書かれていますから、それを参考に出来ます。 体重20kgまでの中型犬用の予防薬のイベルメクチン含有量は1錠当たり132μgですから、体重20kgに近い犬の場合には錠剤の4分の1、10kgに近い犬の場合には1/8錠で確認をすることが出来ます。)
イベルメクチンはミクロフィラリアに対してはSlow kill(じわじわと殺す)であり、ミクロフィラリアを完全に除去するのには日数がかかりますから、投与量を減らすことは更にその除去率を下げる(つまりフィラリア成虫へのショックを軽減できる)ことになります。
イベルメクチンの体内残留時間は短いので、数日後には2回目の投与が可能ですから、数回これを行い、徐々に投与量を増やしていきます。
この方法は成虫が多数いて駆除薬注射による駆除が必要な場合に、そのまま注射すると体内のミクロフィラリアを急激に死滅させてしまうことでの副作用リスク減らすため動物病院でも行われる事前処置方法です。

(より詳細には、メルク獣医学マニュアル→フィラリア→ミクロフィラリア治療をお読みください。) MerckVetManual(英文)

ここで述べたことを実行することは、犬の安全面(予防薬投与による急性フィラリア性が発症するリスク)から言えばおそらく「取り越し苦労」に終わります。
もともと、フィラリア予防薬は海外では薬局やネット販売で購入できるほど安全な医薬品だからです。
しかし、予防の目的とは「念には念を入れて無駄を恐れないこと」です。予防とは本来、「無駄になってよかった」と言うべきものだといえるでしょう。
このことは、「通年投与」の概念にも通底するものです。
「始めよう! 通年投与」もお読みいただければ幸いです。

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