《狂犬病『予防法』の生い立ちとその後》
予防注射を推進する立場の人達が決まって口にするのが、
「法律で決められていることだから(接種は)国民の義務だ」という話です。
そう言われて納得してしまう飼い主さんも少なくないでしょうが、実際に狂犬病予防法の原文を読んだことのある飼い主さんは少ないでしょうし、それがいつどのように出来た法律であるかを知る人はもっと少ないと思います。
時代や環境の変化によって改廃された法律は無数にあります。食糧管理法がいい例でしょう。
JRが誕生したときも「日本国有鉄道法」が廃止されましたし、郵政民営化でも法律が改正されました。
戦後の混乱期に制定された感染症防止のために義務付けられた予防接種は数種類ありますが、現在「狂犬病」を除く感染症についてはすべて廃止され任意接種となって現在に到っています。

《『狂犬病予防法』の生い立ち》

狂犬病予防法が施行されたのは1950年(昭和25年)8月26日のことです。
この年は朝鮮動乱の勃発した年にあたります。(狂犬病予防法原文
また、サンフランシスコ講和条約の締結が1951年9月、発効が翌52年4月ですから、まだ連合国の占領時代に出来た法律ということになります。
戦争前にもないわけではなかった狂犬病ですが、戦後の混乱期には野犬も多かったからでしょうか、戦後は毎年狂犬病が発生し死亡者も出ていました。

狂犬病ワクチンはすでに1885年、ルイ・パスツールによって弱毒狂犬病ワクチンが開発されており、明治時代からはすでに「ワクチン接種をすれば感染しても発症を防げる病気であること」は知られていました。 狂犬病予防接種が狂犬病撲滅のために義務化されたのは、当時の状況からすれば充分に合理性をもつものだったといえます。
事実、この法律は国民にも受け入れられて、まだ狂犬病が発生していた法制定直後の数年は接種率が90%を超えていたとされています。
データで確認できる昭和35年時点で、犬の登録数は190万頭(現在は688万頭=平成21年)です。
犬の飼育数が現代よりも少なかったのは事実でしょうが、それにしても接種率90%以上というのは今昔の感があります。

当時の飼い犬の飼育環境は現代と大きく変わっていました。現代は当時とは比べものにならない車の数ですから、人口密集地域での犬の放し飼いは事実上不可能ですが、狂犬病予防法制定当時の日本では放し飼いにされている犬達はどこでも見かける風景だったようです。ですから、狂犬病よりも野犬捕獲員のほうが怖かった飼い主さんも多かったでしょう。

それやこれやで、日本の狂犬病は法律制定7年後の昭和32年に猫一頭の感染を最後に発生が見られなくなりました。
野犬を殺すよりも飼い犬に予防をしたほうが人間への感染を防ぐのにはずっと効果的ですが、狂犬病が絶滅したのはワクチンを多くの犬に接種したからだけではありません。
もちろん、予防(感染の拡大防止)効果のあったことは事実です、実際には予防法に基づいて行われた徹底した「野犬」駆除により、毎年100万頭以上の犬を撲殺しまくったことが効果的だったとも言われています。

バリ島での画像 日本でもかっては日常的な光景でした。

狂犬病に感染している可能性のある野犬を全部殺してしまえば、その中には実際に感染している犬もいるだろうということで行われたのでしょうが、やはり日本の占領時代、マッカーサーの時代でなければ出来なかったことだろうと思います。ソンミ事件のように村の住民をみんな殺してしまえば中にいるベトコンも死ぬだろうという発想です。
余談ですが、当時は野犬を捕まえて役場に持っていくと報奨金を払ってもらえることさえありました。
今も沖縄県(奄美大島など)ではハブを捕まえると報奨金が支払われるそうですが、人を警戒する野犬を捕まえるのは結構大変だったでしょう。
それよりも手っ取り早いので、庭で繋がれている飼い犬を盗んで保健所に持ち込むような「犬さらい」事件も度々あったそうですが、それはともかく、このような時代の背景によって出来たものが狂犬病予防法であることを理解していただきたいと思います。

狂犬病対策が採られた時代はやはり連合国の指導の下でいろいろな感染症対策が採られました。
この時期には、今では病名を知る人さえ少なくなっている発疹チフスという感染症で多くの人が死亡したのですが、70歳以上の方であれば病気を媒介するシラミを駆除するために小学校でDDTを振りかけられた経験をお持ちではないでしょうか。
チフス以外の感染症を防ぐためにもいろいろな予防が行われました。


撮影時期不明:下記サイトから引用
http://www.slownet.ne.jp/sns/area/culture/reading/kansanyoroku/200801161100-9634340.html

戦後(1948年)、予防接種法制定によって国による防疫体制が確立された。
ただし、当時の戦後の混乱や各種伝染病の侵入の実状から、集団自衛のために義務接種、集団接種の戦略がとられた。
〜中略〜
1948年、戦後の混乱と伝染病の流行への対策として予防接種法が制定され、痘瘡、ジフテリア、腸チフス、パラチフス、発疹チフス、コレラに対する予防接種が開始され、1950年から百日咳の予防接種が加えられた。

(出典)予防接種の歴史ー人類への貢献


昔なつかしい集合注射風景
<狂犬病の暦年発生状況> 東京都福祉保健局
<全国の犬の登録数と予防接種数>

<フィラリア予防は海外通販がお得>
オーストラリアのaiken11.bizでは飼い主さんが経済的にフィラリア予防をできるよう高品質低価格のジェネリック予防薬を取り扱いしています。

昭和32年以降60年間、犬にも人にも狂犬病発生はありません。
厚労省では海外旅行者が帰国後に発症して死亡した例(3人)を発生件数に含めていますが、国内の犬への狂犬病予防接種を必要とする論拠にはなりません。



これらの義務的予防注射は感染リスクの低下と共に徐々に義務から勧奨に切り替えが進み、現在義務的予防注射で残存しているのは狂犬病予防ワクチンだけです。
他の義務的予防注射がすべて廃止されたのに、歴史的な使命を終えた狂犬病ワクチンの義務接種だけが今もって廃止されない理由は、他の義務的予防注射は人間に接種するために副作用が問題視されたり、行政の費用負担が伴っていたのに対し、狂犬病予防注射費用はもっぱら犬の飼い主さんの負担であったこと、そして何よりも「狂犬病予防注射が既得権益化してしまい現在にまで到っていること」によります。



狂犬病が侵入して流行が拡がる可能性は、どこかの原発がメルトダウンしたり、巨大隕石が落下する確率よりも低いとは思いますが、可能性としてゼロではありません。確率を無視すれば何とでも言えますから10億円の宝くじに毎月連続して当たることだってあり得ます。
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《外部資料》
狂犬病の歴史(世界)
狂犬病は4000年前のバビロニアの時代からその存在が人類に恐れられている病気です。
狂犬病の歴史(日本)
日本での狂犬病の記述は奈良時代にまで遡れるそうですが、江戸時代の流行は1732年長崎から始まりました。(詳しく読む)